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選択反応とヒックの法則 — 選択肢が増えるとなぜ遅くなるのか
単純反応・選択反応・Go/No-go の違いと、選択肢の数に応じて反応時間が長くなるヒックの法則、誤反応と無反応の意味を解説します。
反応時間の課題は大きく3つに分けられます。合図が1つだけの単純反応、合図ごとに異なる反応を選ぶ選択反応、特定の合図にだけ反応して残りは我慢する Go/No-go です。
単純反応と選択反応
単純反応では「合図が来たら押す」という決定があらかじめなされているため、判断の段階はほとんどありません。選択反応では合図を見分けて適切な反応を選ぶ時間が加わるため、反応時間が長くなります。
ヒックの法則
ヒック(W. E. Hick, 1952)とハイマン(R. Hyman, 1953)は、選択肢が増えるほど反応時間が選択肢の数の対数に比例して長くなることを示しました。一般に次の式で表されます。
RT = a + b · log₂(n + 1)
ここで n は等しく起こりうる選択肢の数、a と b は人と課題によって決まる定数です。選択肢が1つから2つに増えるときの増加分は、8つから9つに増えるときよりはるかに大きくなります。メニューやボタンが多いほどユーザーが迷う理由を説明する際にもよく引用されます。
Go/No-go 課題
Go/No-go は、選択肢が「押す/我慢する」の2つの課題です。このサイトでは ● が Go、✕ が No-go で、Go 5回と No-go 3回がランダムな順序で出題されます。2種類のエラーを別々に数えます。
- 誤反応(commission) — ✕ で押した場合。衝動的に先に押してしまう傾向を示します。
- 無反応(omission) — ● を1.5秒以内に押せなかった場合。注意が途切れたことを示します。
速さと正確さのトレードオフ
速く押そうとするほど誤反応が増え、間違えまいとするほど反応が遅くなります。これを速さと正確さのトレードオフ(speed–accuracy trade-off)といいます。Go/No-go の結果を見るときは、反応時間と誤反応の数を一緒に見る必要があります。反応時間が速くなったのに誤反応も増えたなら、実力が伸びたというより、焦って押した可能性が高いでしょう。
年齢と選択反応
英国の成人7,130人を分析した Der & Deary(2006)では、単純反応時間は50歳前後まで大きく変わりませんでしたが、4択の選択反応時間は成人期を通じて遅くなりました。判断の段階がある課題ほど、年齢の影響を受けやすいということです。
参考資料
- Hick, W. E. (1952) On the rate of gain of information. Quarterly Journal of Experimental Psychology 4(1):11–26
- Hyman, R. (1953) Stimulus information as a determinant of reaction time. Journal of Experimental Psychology 45(3):188–196
- Der G., Deary I. J. (2006) Psychology and Aging 21(1):62–73